【泌尿器科専門医が解説】低用量タダラフィルの副作用について~安心して治療を続けるためのガイド~

ED(勃起不全)や前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療として、当クリニックでも多くの患者様に処方している「タダラフィル(商品名:シアリス、ザルティアなど)」。
特に、低用量(2.5mgや5mg)のタダラフィルを毎日服用する「デイリータダラフィル(毎日服用)」という治療法は、食事の影響を基本的に受けにくく、服用のタイミングを気にせず自然な性生活を取り戻せる点や、1つのお薬でEDと排尿の悩みを同時にケアできる点から、非常に人気のある画期的なアプローチです。
しかし、毎日飲み続けるお薬となると、「副作用は大丈夫だろうか?」「体に負担はかからないか?」と不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。タダラフィルは世界中で広く使われており、有効性と安全性が確立されたお薬ですが、お薬である以上、副作用の可能性はゼロではありません。
今回は、低用量タダラフィルを安心・安全に服用していただくために、知っておくべき副作用の種類と、その対処法について詳しく解説します。
よく見られる副作用(軽度・一過性のもの)
タダラフィルは、血管を広げて血流を良くする働き(PDE5阻害作用)を持つお薬です。この作用が陰茎や前立腺だけでなく、全身の血管にも少し影響を与えるため、以下のような症状が出ることがあります。国内の臨床試験データ等では、全体の約1〜10%程度の方に報告されています。
1. 頭痛・顔のほてり
血管が拡張し、血流量が増加することによって起こります。お酒を飲んだ時に顔が赤くなったり、頭が痛くなったりするのと似たメカニズムです。多くの場合、お薬の成分が体に慣れてくると自然に治まります。
2. 消化不良・胃もたれ・胸やけ
胃や食道の筋肉が緩むことで、胃酸が逆流しやすくなったり消化機能に影響を与えたりすることが原因です。
3. 鼻づまり(鼻閉)
鼻の粘膜の血管が広がり、粘膜が腫れることで鼻づまりを感じることがあります。
4. 筋肉痛・背部痛
タダラフィル特有の副作用として、服用した方の数%に筋肉痛や背中の痛み、手足の痛みが現れることがあります。これは、タダラフィルが骨格筋に多く存在する「PDE11」という別の酵素にも作用してしまうためと考えられています。痛みが現れるのは服用から12〜24時間後が多く、通常は48時間以内に自然に回復します。
【一般的な副作用への対処法】 これらの症状の多くは軽度で、お薬の効果が切れるとともに自然に治まります。もし頭痛や筋肉痛が辛い場合は、市販の鎮痛薬(アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬など)を服用しても問題ありません。 痛みが長引く、または日常生活に支障が出るほど強い場合は、無理をして飲み続けず、自己判断で中止する前に当院へご相談ください。お薬の用量を調整したり、他のお薬への変更を提案させていただきます。
まれですが、注意が必要な重大な副作用
発生頻度は極めて低いものの、万が一以下のような症状が現れた場合は、すぐにお薬の服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
1. 持続勃起症(プリアピズム)
性的刺激がないにもかかわらず、痛みを伴う勃起が4時間以上続く状態です。放置すると陰茎の組織が回復不能なダメージを受け、将来的に勃起機能が完全に失われてしまう危険性があります。4時間以上勃起が治まらない場合は、夜間であっても直ちに救急外来や泌尿器科を受診してください。
2. 急激な視力低下・視野の欠損
「NAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)」と呼ばれる、目の視神経への血流障害が報告されています。朝起きた時に片目の視野の一部が欠けている、急に見えにくくなった、といった症状があれば、すぐに服用を中止し、眼科を受診してください。
3. 突発性難聴
急に耳が聞こえにくくなる、耳鳴りがする、めまいがするといった症状が報告されています。このような聴覚の異常を感じた場合も、直ちに服用を中止し、耳鼻咽喉科を受診してください。
絶対に一緒に飲んではいけない薬(併用禁忌薬)
タダラフィルを安全に使用する上で、最も重要なのが「飲み合わせ」です。
狭心症や心筋梗塞などの心臓病の治療に使われる「硝酸薬(ニトログリセリンなど)」を使用している方は、タダラフィルを絶対に飲んではいけません。両方の薬の血管拡張作用が重なり、急激で危険な血圧低下を引き起こす恐れがあり、最悪の場合は命に関わります。飲み薬だけでなく、貼り薬や吸入薬、スプレータイプの硝酸薬も同様に危険です。
また、肺動脈性肺高血圧症の治療薬である「可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬(リオシグアト等)」も併用できません。
- デイリータダラフィル療法をご希望の方で、現在病気治療中の方は、必ず医師に申告をお願いいたします。
- デイリータダラフィル療法を継続中の方で、新たに他の医療機関にかかる際は、必ずデイリータダラフィル(低用量タダラフィル)を毎日服用していることを申告してください。
おわりに:自己判断せず、医師と二人三脚で治療を
低用量タダラフィルは、用法・用量を正しく守って服用すれば、高い安全性と優れた効果を発揮し、患者様のQOL(生活の質)を大きく向上させてくれる素晴らしいお薬です。副作用の知識をあらかじめ持っておくことは、「何かあった時にどうすればいいか」という安心感に繋がります。
「こんな症状が出たけど、お薬のせいかな?」「副作用が気になって飲むのをためらってしまう」など、少しでも不安なことや疑問に思うことがあれば、ご相談ください。
患者様お一人おひとりの体質やライフスタイルに合わせ、最適な治療法を一緒に見つけていきましょう。

医療法人隆生会 やすだ泌尿器科クリニック
院長 安田 宗生
日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
